もっとうまくお話しできると思ったし、もっと目を見て笑うこともできると思った。

何もかもうまくいかなくって、私といることはさぞつまらないだろうなあと、相手のことばかり考えて、自らを暗い崖に突き落としてしまった。

いつものことだけどね。慣れたくないし、慣れない。

 

10日のお昼少し前。なんだか最初はどきどきしてしまった。

久しぶりという声も、ありがとうという微笑みも、ぜんぶぜんぶ、ごめんねという俯きになった。

だから、今日は泣いてもいいから本当にありがとうと言いたかったし、馬鹿みたいだけど、死んだらいちばんにお葬式に来てねって伝えたかった。お金なんていらないから、眠った私にばいばいって声をかけてほしい。

会えないから、私が最期を迎えても、彼はきっとどこでもないそこを見つめて煙草をふかすだろう。

 

一昨日の夜には少しだけ笑えたのに、昨日はお手洗いに向かう度にお薬を流し込んだ。これをのめば少しだけだとしても、笑えるんだ、ありがとうが言えるんだって、言い聞かせた。実際、ほんの少しの勇気を持ち合わせていなくて、できなかった。

 

恋とか友情とかそういうものを超えて大事にしたいひとなのに、その対象に限って何もできなくなってしまうのはなぜだろう。

私は手を伸ばしてから後悔するタイプだったはずなのに、伸ばしてもいないまま泣いている。

地元に戻ってもきっと連絡くらいとれる。だけど、それじゃだめなのはなぜなのか。こんなに意固地になっている私を、私は見たことがない。

 

今日あたためたことばを、今日のうちに届けたかっただけ。

あたためなおしたことばは、きっと然程変わりない。私がいま積み立てて、組み立て直した、今のことばを届けたいだけ。自己満足。

 

きっと彼にはわからない。伝えもしない。

昨日見た彼が私にとっての最後の背中だと思う。

会いたくないのでもない。会わないのでもない。

そうっと、閉じ込めておきたいのかもしれない。

 

会いたいなあと思う。すきだなあと思う。

それだけ。