屋根から落ちる露がやさしく地面に着地している。

もうあたたかな春がそこまで来ているのに、私はまだ動かなくて、涙が止まらなくて、冬に閉じ込められたいとすら思う。

 

すき、という気持ちは、私の中に存在するのかどうか、考えるようになった。

今までしっかりとすきなひともいたし、すきな食べものだってあったけど、改めて考えてみた。私の中のすきのコレクションからは全部消えている。

なんで?どうして?すきだったのに、なんでなくなってしまったの?とすら思わない。執着心がないからなのかなとも思ったけど、私はすきなものを自ら手放すことによって、自分が傷つくのを回避していただけ。

すきなものをきらいなものになる瞬間、そのほんの一歩手前で私はお別れをすることにした。

私が自分の意思で、すきでなくなったものと思えるように。

 

今の私はゼリーのようにキラキラしているけど、触れたらすぐにぐちゃぐちゃになってしまうような好きなものにしか囲まれていない。

なんだろうね、この気持ちは。

本当にすきなものに巡り会えたときに後悔するのは目に見えていることもわかっていたのに。

 

たくさんの嘘と見栄といっしょくたになった虚栄が、ゼリーの中身になって私を見ている。

 

きらいと言われる前にもきらいだよって言いたい。

怖いから。

突然のさようならも今は耐えられない。

 

自立歩行の前にゼリーを壊して、綺麗な標本箱を見繕えるようになりたい。

すきなものができますように。